”活きた窓”

 ハウスメーカーの住宅と建築士の設計した住宅を一般的に比較した時、建築士の設計した住宅のメリットは何でしょう。メリットは2つあります。

 1つは、前者が既製品であるのに対して、後者は住み手に合わせたオーダーメイドというところです。   ですがこれは、ほとんどの衣服がサイズ別の既製品であることからもわかるように、よほどこだわった住宅を求めない限りそれ程重要ではないでしょう。

 もう1つは、前者が敷地の状態を考えていないのに対して、後者は敷地に合ったオーダーメイドというところです。   こちらは衣服のように  S,M,L  の区別から選ぶという訳にはいきません。敷地には大きさだけでなく、周囲の道路や建物との関係、そして眺望といった要素があり、むしろこちらの方が重要だからです。   建物には外とつながる窓や出入口があるのですから当然のことです。   それゆえ、建築士が敷地のことを考えて設計した住宅には単なる明り取りや外観の見栄えのため以上の ”活きた窓” が必ずあります。

そういう窓は、間取り全体と関連していて、住宅での住み心地を大きく左右します。そうした ”活きた窓” をつくれることが、建築士の設計した住宅の最大のメリットといえるでしょう。

ポートレート写真

一級建築士 井上孝紀