羽黒町 細谷の家外観は数奇屋のテイストをもった和風、屋根には鶴岡らしい鬼瓦(三の経)を載せ勾配は浅め、瓦は全体に敷くのではなく一文字瓦を使った腰葺きとし、軽快感を出すと同時に頭を軽くして構造の負担を減らしています。(因みにこの家の耐震強度は最高の3で通常の1.5倍の強度となっています。)

正面の軒屋根は一部が奥まで入ることで建物と一体となり、さらに深く低く十分に張り出すことで出入りする人を優しく迎え入れまた送り出します。軒下の一部は手摺の付いたスロープに、そして和室の4枚のテラスサッシの先は縁側のようにご近所さんが腰掛けられる土間の高さにしています。また軒裏の先端部分だけは垂木を見せる化粧垂木とし、全体の中でメリハリを付けながら和風住宅のもつ繊細さも表現しています。

一方室内はフローリングと段差無く敷かれた長いレンガ敷き部分のもたらす床面としての安定感によって、フローリング上部には高い天井、天窓、シーリングファンなどがあり普通ならばここには椅子が望まれるシチュエーションであるにも拘わらず、フローリングに自ずと座りたくなる安心感が醸し出されています。その結果隣接する畳とフローリングの関係にもこれ以上無いほどの親和性が生まれ、薪ストーブの暖かさと相まって広がりのある何ともいえない居心地の良さを生み出しています。内覧会に来られた方が「この家は家に来る人みんなが仲良くなるような家だ。」と言われたことを思い出します。そんな居心地の良さといえるかもしれません。

麻の葉の組子と青いアクリル板の入った引き違い戸は玄関を風除室にもするための建具です。そこを入ると畳を4枚並べて敷いた廊下を兼ねた玄関ホールがあります。家を出入りする人が暖かい場所でゆったりコートを着て支度できる気持ちの良い場所です。ここからリビングにも座敷にもつながります。建具を取り払えば部屋の一部になります。リビング側には通常の2倍でそれぞれが畳2枚分の引き違い戸があります。麻の葉の組子の建具、幅広の建具、その他和風の建具は全て詳細に設計し制作してもらっています。

最後に、与えられた条件によって出来上がる家は千差万別です。しかしながらアイセッケイの私達はいつも同じ気持ちで同じように精一杯取り組んでいます。

お施主様に:ご縁があり、この様に設計させて頂き喜んで頂けたことをとても幸せに感じています。以降もお付き合いよろしくお願いします。

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